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耳障りな機会音とともに吐き出されてきたのは、UさんからのFAXだった。
『何を信じていいのか、分からなくなりました』
つい数日前、相談を寄せてきたMさんと同じ嘆きがそこにあった。
そしてまた、知人のAさんとも。

Uさんの場合
再発予防に、経口の抗ガン剤を飲んでいるが、私の講演を聞き、止めようと決心。同時に、玄米菜食を始めた。ところがその頃、ある健康食品の業者が言う。抗ガン剤は続けつつ、副作用を防ぐためにも健康食品を飲むようにと。しかも、玄米は消化が悪いから即刻止めるようにとも、進言されたのである。 困ったUさんは、主治医に一部始終を話す。結果は、玄米も健康食品も、共に言下に否定され…。

Mさんの場合
骨転移の腰の痛みを、信頼する先輩患者に相談。その人は普段、三大療法には批判的。ところが意外にも、「抗ガン剤で叩くのもいい」。驚いたMさんは、久しぶりに私のもとに駈け付けてきた。だが当然、私はいつもの主張を繰り返す。再発を繰り返している場合、抗ガン剤は無効。痛みは、枇杷葉温灸や生姜湿布で改善出来る。
Mさんは、こぼした。
「何を信じたら…」

Aさんの場合
ここ三年あまり、さまざまな食事療法に実に熱心に取り組んできた。しかし、内容は指導者によって千差万別。根菜類を勧める人、まったく逆に、否定する人。生野菜を奨励する人がいるかと思えば、温野菜(煮たり蒸したりしたもの)でなければという指導者もいる。塩を厳禁する療法もあれば、しっかり摂れと言う治療家もいた。

「川竹さん、何を食べるのがベストか、専門家が集まって決めてくれませんか」ある講演会で、患者さんから、そう懇願された経験がある。

Aさんの心境もそれに酷似していた。次から次へ漂流し・・・疲れ果て、ついに吐息まじりに言う。

「もう、何を信じていいのか分からなくなった」
三人には、共通していることがある。

こんなにも迷うのは、自分たちの知識不足、情報不足のせいだと思っていることだ。

『もっと信頼できる情報』が、『もっともっとたくさん』あれば、その中から『理想のもの』を選び取ることが出来ると、信じている。その証拠に、三人とも、繰り返し『もっと詳しく』教えてくれと私に迫る。しかし、三人の願いがかなえられることは永久にないだろう。

何故なら、三人は、ゼロであり、0×X=0だからである。

どういうことか。
私も、医師も、健康食品の業者も、そしてさまざまな食事療法の指導者も、それぞれの『信念』にもとづいて話をしている。善悪理非の判断は、自分で下している。自分を信じているからだ。

だが三人には、自分というものが、まるでない。ゼロなのだ。

だから、どんなに豊富な情報や知識(X)を取り入れようと、結局は、ゼロにしかなりようがない。私がどんなに詳しく、幾度繰り返して説明しようと、自分がゼロである三人は判断を放棄することによって、すべてをゼロにしてしまうのだ。その虚しさに三人は気づいていない。

また彼らは、『100%正しい意見』が、いつか見つかると思っている。
1+1=2のように、誰にも異論のない解答がどこかにあって、いつかそれに出会えると・・・。

だが、そんなものは存在しない。私も、医師も、業者も、そのことを知っている。だから不完全は承知の上。それでも、今現在、最良と思えることに自分を賭け、信念を語っているのだ。

だが三人は違う。どこにもありはしない理想の解答を、いつか誰かが目の前に差し出してくれると当てにして、ただウロウロと、さ迷うばかり。自分の命と運命を、人に委ねてしまっている。

自然退縮の人たちの経験に学んでほしい。

人参ジュースに賭けて治した人がいる。熱いシャワーや川の流れが、乳ガンや子宮ガンを流してしまうと信じて、本当に治してしまった人たちもいる。彼らは、自分で選んだ。駄目なら、別な道を行こうという覚悟があった。だから、三人に言いたい。

決して他の何かではなく、自分の直感力、判断力、眼力、運命、つまりは自分自身を信じてほしいと。そしてせめて『1』になることだ。

例えどんなに間違っても、やり直すチャンスはいくらでもある。少なくとも、いつまでもゼロでいるよりは、はるかに。

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